ラーシーン絵本人気投票結果。最終回です!11位から。
11位は3冊です。
11位(5票):『怪獣と自転車』文:アフマド・アクバルプール
ある作家が、自転車が大好きな怪獣のお話を娘のドルサのために書き、ドルサ本人もちょいちょい物語に顔を出す、といった形の物語。怪獣なので人間たちを食べようとするんですが、自転車を好きな場合は特別扱いで、<友だちコーナー>に名前が書かれ、保護されます。きめ細やかな対応にちょっと吹いちゃう。
自転車を好きなのはアクバルプールさんご本人なんじゃないかな、と。

11位(5票):『ぼくのお嫁さん、きみがうたう歌』文:モルテザー・ホスロウネジャード
足に棘が刺さったことがきっかけで、歌を歌えないスズメが色んな人にちょっとした親切をしていきます。思い通りに「お礼」をもらえなくてイライラするんですが、最後にひとりぼっちの目の見えない歌手に自分のお嫁さんを渡し(お嫁さんも納得のうえですよ)、歌手からは素敵な歌声をもらって歌を歌えるようになる、というお話。何かをわたして何かをもらう。そうやって人生は進んでいく。なるべくバランスがいいといいけれど。
11位(5票):『ラッキー・ウェンズデー・ガム』文:セイエド・ナヴィード・セイエド・アリーアクバル
バーハールという女の子が、ごみばこで見つけた「ラッキー・ウェンズデー・ガム」という名のガムを噛んでいると、行く先々で出会う不機嫌な人たちの願いがかなうのだけれども、その人たちが、「やっぱりやだ、元に戻して欲しい」と言いにきたので元に戻してあげる、というお話。
アイコウはこの絵本に一票を投じました。タイトルと主人公のバーハールが好きで。
朝暗いうちからごみ箱を探索しているバーハールは、多分、そんなに恵まれた境遇ではないんだけれども、本人はそういったことを全く気にするふうでなく、ガムを噛みながら、ごく自然に他人の願いを願います。小さな神様かなんかかな、と思いました。
さて、ラスト3冊!14位は2冊です。
14位(4票):『きつねと雁』文:マジード・シャフィーイー
群れを守るために見張り役を仰せつかった雁が、きつねの仕掛けに騙されて失敗を重ね、そのせいで怪我を負った仲間の雁とともに置いてけぼりにされる、というお話。きつねは鶏や雁を狩ろうとする悪役なわけですが、結局あんまり上手くいかないので、雁たちの厳しいやりとりの裏でややぼんやりした存在になってます。表紙を見ると、楽しそうに自転車に乗ったりしてて、主人公然としてるんですけどね。
14位(4票):『赤いボール』文:ラーレ・ジャアファリー
小さなお話が5つ収録されています。中でも一風変わっているのが「CDとネコおじさん」。元気のないCDをネコおじさんが笑わせるけれども……という斬新なお話。CDってあの音楽とか聞くあのCDですよ。でもラーシーンさんはごく自然に絵をつけているので、読者も自然に受け入れられます。
表紙の三人組、なんだろうな。お話の中には出てこないのですが。

そして、栄えある16位は、、、
16位(3票):『飛ぶ』文:アフマドレザー・アフマディ飛行機に乗って、空からいろんな花の種を蒔く少年のお話。少年は飛行機で空を巡りながら、果物をもいだり、月にペンキをまいたり、太陽に預言者たちの名前を書いたり……いろんなことを、やりたいように、実に楽しそうに、やっていきます。絵は、布を巧みに使ったコラージュで、他の作品に負けず劣らずかわいいです。色鮮やかなところがラーシーンさんにしてはめずらしいかもしれません。
という結果となりました!どれにも票が入り、人気が突出した作品がなかったというのは興味深いことでした。どの絵本も誰かの「お気に入りの一冊」になったということですから、並べた者としては大変嬉しいことです。
ご参加いただいたみなさま、本当にありがとうございました!
ということで、ラーシーンの絵本展、終了。
来週から二年ぶりのイランなので、準備に没入します。