何年も前の夏、イラン内陸の乾燥地域を車で縦断したことがありました。運転手はイラン人の大学教授。
土漠が周りに広がる小さな町で昼食をとったのですが、1日で一番暑い時間帯だったと思います。クーラーなどないレストランで煮込み料理を食べた後、小さなお茶屋で熱いお茶を飲みました(乾燥している場所では汗があまり出ないので、熱いお茶もおいしく飲めます)。そんな感じでご飯とお茶で満足して、さあ、出発しますか、という時に、その大学教授の先生が、凍らせてあった大きな水筒から冷たい水をカップに注ぎ、わたしともう一人の留学生に渡し、そうしてからご自分でもお飲みになりました。その時先生の口からふっと独り言のように出た言葉が
「人生は美しい。」
一見大げさな言葉が、とんでもなくささやかな風景を完璧に表現するんだなぁ、と身にしみた一言でした。