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竹原新先生による「イラン民俗のなかの動物たち」

アミーン・ハサンザーデ=シャリーフ展の関連企画、大阪大学の竹原新先生による「イラン民俗のなかの動物たち」が15日夜に開催されました。ご参加いただいたみなさま、誠にありがとうございました!

だいぶ時が過ぎてしまいましたが、イベントの様子をご報告したいと思います。

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竹箆先生はイラン民俗学がご専門。フィールドワークでイランの民話を収集し、『イランの口承文芸』というぶあつい著書も出されています。今回はライオンをはじめとする様々な動物が、物語や言い伝えの中でどうのように現れるか、というお話をしてくださいました。

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画像や映像はもちろん、詳細なレジュメも用意してくださり、さらにはネクタイまでライオン柄という、まさに万全の態勢でイベントに臨んでくださった竹原先生。トークは『ごきぶりねえさんどこいくの?』のごきぶり(黄金虫)に始まり、羊、龍、猫、ライオン、犬、牛、鶏、カラス、フクロウと多岐にわたりました。29もの事例をご紹介くださったのですが、その中には振り向く猫にまつわる怪談(といってもペルシャ語ではカテゴリーとしての「怪談」というのはないそうです)や、濡れたたてがみが臭いと言われたために「俺を斧で殴れ」と人間に迫るめんどくさいライオンの話や、卵を使った邪視の犯人探しやら、ほんとに色々な種類のお話がありました。事例から派生する小ネタもてんこ盛りで、今でもふとした拍子に思い出して吹いたりしています。

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そして、ライオンの話じゃこれに触れないわけにいかないでしょう、ということで、サファヴィー朝以来の国旗や以前の赤十字の旗についての解説。 確かに今回DMで使った絵を見ると、イランの方ならほぼ100%、ライオンと太陽を中央に配した革命前の国旗を思い出すでしょう。

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(ライオンとその5人の姉妹)by Amin Hassanzadeh Sharif

「えぇ!これってそんなセンシティブ絵なの?」と言いたくなるところですが、そこまでセンシティブではないようです、というのが竹原先生のお話。イラン国内で、「赤新月社(イランの赤十字)の旗をこれに戻そうという意見もあるほど」だそう。まあ、ライオンには罪はないですからね。
それにアミーンのライオンはなにかちがう…。剣を振りかざしてドヤ顔をしているわりには強そうな感じがせず、背中の五人姉妹(太陽ではないらしい)はぎゅうぎゅうに並んでいます。剣を持っていない三本の足は、鉄アレイを縦にしてフサをつけたような妙なのに乗ってますし…。じっと見ていると、「ワタシ、国旗などになってがんばってきましたが、こんな感じもできますから。楽しい感じもできますから」という声が聞こえてきそうな不思議な滑稽さを感じます。個人的感想ですが。

と、いう感じでいわゆる「お話」だけでなく、国旗や教科書、邪視よけにも言及しながら様々な動物のお話をしてくださって90分はあっという間に過ぎました。

「イラン民俗の動物はよく異界と関係する」
「物語における動物の機能はフィクション性である」

というのが先生のまとめです。確かに、うかがったさまざまな事例の中の動物たちは、人間が”知らない”、けど、”あるかもしれない”世界を垣間見せてくれる存在でした。動物たちのおかげで人間はもっと大きな世界を見ることができる。そして自分の小ささを知ることができる。ありがたいですね。
そんなありがたいお話を、竹原先生、ありがとうございました!ぜひまた何かの機会にお話いただきたいです。

ちなみにこのテーマはアミーンのシルクスクリーンが展示されているみんぱくの「驚異と怪異」展にもつながると思いました。この展覧会もほんとにおすすめです。11月26日までですので、ぜひおでかけください。

ではでは最後に、先生が教えてくださった昔話の結語で。

「はなしはこれでおしまいだ。カラスは家に帰らなかった。」


by salamx2 | 2019-10-20 23:51 | amin_1910 | Comments(0)