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salamx2の雑談

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「酒をのめ、これこそが永遠の命」

早いもので展覧会も終盤にさしかかっております。
はやいなぁ……なんてぼやきたくなりますが、そんな時は12世紀の詩人ハイヤームの四行詩ルバーイー(複数形ルバイヤート)を唱えるのがよろしいのですよ!

というわけで、10日(日)はイベント「自分の声で楽しむルバイヤート」でした。初めての試みでしたので、企画を考えた時には、全く応募がないということもあるかもな、と思ったりもしたのですが、蓋を開けたらそのような心配は全く杞憂で、サラーム・サラームのイベント史上最も速く席がうまったのでした。参加者のプロフィールもバラバラで、大学でペルシャ語を専攻していたという二人組もいれば、ルバイヤートやハイヤームはもちろん、イランの位置さえちょっとあやしい、というくらいイランとは縁遠い方も参加してくださいました。ほんとうに嬉しい限りです。

そうして始まったイベント。前半は作者のハイヤームが12世紀に生きた大変優秀な学者であったことやルバイヤートが日本でもいろんな形で愛されていることについて簡単に説明しました。そして、満を持しての読む詩の発表。今回は初めてということもあり、渾身の一編のみです。発音のしやすさや意味のとらえやすさなどを考慮して選びました。その詩がこちら。

メイヌーshケ オムレジャーvーダーニー イーナーst
ホッd ハーセラッt アz ドウレジャヴァーニー イーナーst
ヘンガーメ ゴロモラストォ ヤーラン サルマーst
ホshバーshダミー ケゼンデガーニー イーナーst

ペルシャ語初体験の方がどうやったらペルシャ語らしい発音ができるだろうかと考えて作った、カタカナとアルファベットが混ざった表記です。参考にしたのは以前東京外大の教授だったザフラー・ターヘリー先生の朗読。わたしの読み方は完全にターヘリー先生の真似でございます。
意味はこんな感じ。

酒をのめ、これこそが永遠の命
青春の果実なのだ。
バラと酒、友の酔う季節
この一瞬を楽しめ、この一瞬こそが人生

「明日のことを思い煩うな、酒をのんで今こそを楽しめ」、というハイヤームの教え(?)がよく現れている一編です。
この詩をやろうと決めてからわたしもちゃんと覚えようとずっとブツブツ言っていたのですが、つぶやいているといろんなものが削ぎ落とされて、詩と一対一で向き合うような感覚になるのがおもしろかったです。これまでにいろんな研究者によってある程度は説明されていることでも「酒ってなんの比喩だろう」とか「青春の果実ってどういう意味かな」などと改めて考え出すんです。そしてふと自分なりに納得できるポイントに考えが辿り着くととても嬉しいんですよね。詩に近づけた気がして。4行という短い詩であるルバイヤートを楽しむとはこういうことなのかもしれない、と思いました。

さて、練習の仕方は大変シンプルでした。わたしが適当な区切りまで言った後を繰り返すという、言ってみればそれだけ。とても簡単です。でも、ペルシャ語は初めてという方も多かったので、漠然と「たくさん反復練習するんだろうな」と思っていたのですが、一回目の繰り返しでみなさん音の高低をほぼ掴んでいてびっくりしました。
日本語っぽくならないように、stとかvとか書いてあるところを注意深くその通りに読んでくださいましたし、みなさん、ポイントがよくおわかりでしたね。いやはやびっくりびっくり。
とはいえ一回で終わるわけにもいきませんから、反復練習を何度かやってターヘリー先生の朗読なんかも一緒に聞いたら予定していた1時間はあっという間に過ぎました。

普段全く交ることのない方々が、「ペルシャ語の詩を言ってみたい」という一点で重なって同じ時間をすごした、ということ自体がわたしにとっては興味深く、また不思議ないとおしさを持っています。
初めての試みにも恐れず参加してくださったみなさま、おいしいクミンクッキーを焼いてくださったPatinaの岩田さんと佐藤さん、誠にありがとうございました!

この一瞬を楽しめ、この一瞬こそが人生!

「酒をのめ、これこそが永遠の命」_e0091706_154830.jpg

(バラは美女の頬なり)
by salamx2 | 2016-07-15 01:58 | ehon_1607 | Comments(0)