20世紀前半に生きた
小熊秀雄という詩人がいます。彼は詩人でしたが、童話も書きました。その中の一つが『焼かれた魚』です。
皿の上の焼かれた秋刀魚が、海を強烈に懐かしみ、なんとかして海に戻ろうとし、いろんな動物に自分の肉と引き換えに海へ連れて行ってもらう、、、というとてもシュールな内容。全編を覆う、ちくりちくりと胸を刺すような物悲しさが深い印象を残す作品です。
この作品は1993年に市川曜子さんの絵と、アーサー・ビナードさんの英訳がついた絵本になりました。美しい本です。そしてその美しい本は、ペルシャ語に翻訳されてイランで売られています。それが写真右側の本。
恐らくビナードさんの英語からの翻訳だと思いますが、この派手ではない物語は、どうやってイランへ渡り、そしてイランの児童文学者の心を捕らえたのでしょう。とても気になるところです。