HPを見て頂くとよくわかるのですが、この展覧会は、160年前にロンドンで出版された『オリエント画集』の多色石版図版30点を高精密複製したものの展覧会です(作品はHP内の「展示品」というコーナーで全て解説付きで見られます)。
石版画の下絵を描いたのはフランス人のエジプト学者で、20年近くナイル流域に住み、現地の人々と同じように生活した人、なんだそう。スケッチの対象は貴婦人から農民まで様々で、当時の学者の学問的態度というか、使命感のようなものを感じます。
わたしが特におもしろいなぁと思ったのは「女奴隷」が出てくる図版。「女奴隷」というとなんだかそれだけでつらい物語が想像されそうですが、この図版の中の奴隷からはそういう雰囲気を感じません…確かに主人の態度は偉そうですけども、服装は「奴隷」の方もなんだか素敵ですし、「ある意味」大事にされていたのでは、と思わせます。
その他、「エジプト人女性は、子どもを腕に抱くより肩にのせるのが普通だった」という解説が印象的な、農民女性を描いた図版も心に残りました。
つまり、自分の今の「常識」をちょっと覆してくれるような、当時のエジプトの「常識」をかいま見ると、おもしろいなぁ、と感じるんでしょうね。純粋に「へ〜」という。
解説もわかりやすいですし、お近くの方は是非見に行ってみてください。
ただ、ひとつわがままを言うならば、160年前の原版も一点でいいから展示してほしかったなぁ。