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salamx2の雑談

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金曜日


静かな金曜日
見捨てられた金曜日
古い路地のように哀しい金曜日
病的で怠慢な考えが浮かぶ金曜日
冗談で有害なあくびのでる金曜日
期待もない金曜日
服従の金曜日

空虚な家
落胆した家
若者の混雑から扉を閉ざした家
暗闇とただの太陽のイメージの家
孤独と占いと疑念の家
カーテン・本・食器棚・絵だけの家


あぁ、なんて穏やかで傲慢に過ぎていったのだろう
わたしの人生 まるで見た事もない小川のように 
静寂なこの金曜日の中で見捨てられた
空虚なこの金曜日に落胆した
ああ、なんて穏やかで傲慢に満ちて過ぎていったのだ



フォルーグ・ファッロフザード(鈴木珠里訳)現代イラン詩集より



今日は、湿った風の強い金曜日。
いつからか土曜日の休日が定着しはじめた日本では、ほんの少し心躍る金曜日ではないでしょうか?
「日曜日の休日」は、今ではキリスト教圏以外でも広がっている習慣ですが、イスラム圏のイランでは、金曜日が休日です。そう、土曜日から平日がはじまるのです。

そして、金曜日はムスリムの集団礼拝の日でもあります。
そんな背景を心に留めて読み進めるとよりいっそう心を添うことができます。

「古い路地のように哀しい金曜日」
こんなふうに「曜日」をとらえた事がなかったものの、何か無意味に過ぎて行くような日曜日の夕暮れ時に感じる小さな焦りと自分への戒め、そしてこれでいいのだと安易に自分自身を受け入れる姿がさまざまと浮かんできます。

と、勝手に自分に引き寄せて感じてしまいますがこの詩の背景には「イランという国」の現実がじわりと滲み出ているように感じます。けっして、声高らかに激しく訴えているものではありませんが、冷静さと情熱が心に秘めている者にしかとらえられない確かな現実の描写があります。

「暗闇とただの太陽のイメージの家」などは、ぞくっとします。

この詩人のフォルーグは、自動車事故により32歳という若さでこの世をさった女流詩人で、家庭における倦怠感や孤独感などを女性らしい情感で表し次第に高い評価を得ていった方です。

さぁ、「金曜日」のはじまりです。

先週の金曜日に産経新聞の記事で、こちらの詩が一部引用されていたのでご紹介しますね。↓
【歴史の交差点】東京大学教授・山内昌之 見捨てられた金曜日
2009.7.3

by salamx2 | 2009-07-10 11:09 | 詩のこころ | Comments(0)